馬渕健一が、1947年にこの「馬蹄型マグネットモーター」を発明するまでは、モーターといえば大きな交流モーターが主流でした。また、直流モーターも固定子にコイルを巻いて磁場を作るのが常識だったため、消費電力が多いわりには回転力が弱く、実用には程遠いものでした。
超小型で強力、しかも安価なモーターなど存在しなかったのです。
「子供達のために模型の自動車をもっと速く、もっと長く動かせるモーターが欲しい、しかも小型で値段も安くなければダメだ。」
健一の情熱は画期的なアイデアへと結実します。
「モーターの磁場を作るのに、なにも消費電力が多いコイルを使わずともいきなり磁石を使えばいいではないか。」
この単純な思いつきは、固定観念にとらわれずに常識をひっくりかえす、まさに「コロンブスの卵」だったのです。
試行錯誤の後、磁石の形は馬蹄型(馬の蹄鉄型)が効率の良いことがわかりました。この独特な磁石でローターを包み込むように置いた、わずか5センチほどのモーター。
マブチのものづくりは、ここからスタートしたのです。