基本戦略
当社には「国際社会への貢献とその継続的拡大」という経営理念があり、これを企業としての存在目的と位置付け、この実現に向けた企業活動を行っています。経営戦略を策定する上でも、この経営理念が最も重要な判断基準となっています。
この不変の経営理念のもと、短期的な利益に目を奪われることなく、社会のために必要不可欠な企業として着実に発展・成長していきたいと考えております。
事業領域の特化
当社は、明確に製品・技術の範囲を小型直流モーターに絞り込んでいます。小型直流モーター事業への特化は、企業基盤の脆弱化を招くとの見方をされるかもしれませんが、絶え間なく技術を進化・深耕させることで小型直流モーターの利用領域は広がり、用途の多様化が可能となるのです。
常に世界市場を視野に入れ、全ての経営資源をコア・コンピタンスに集中した結果、業界で世界No.1のシェアを確保するに至りました。世界No.1の生産量は、お客様からの高い評価と信頼の証であると同時に、高品質の製品を安定供給し続けるという重大な社会的責任があります。
そのために、高品質と低コストという相反する課題を同時に実現するための戦略、それが「標準化戦略」と「国際分業体制」です。
標準化戦略
当社が標準化戦略に踏み切るに至った歴史的背景を紹介いたします。
戦略策定までの背景
創業初期の主力市場であった玩具業界においては、お客様ごとに異なる要望に合わせて受注生産を行っていました。モーターが個別仕様のため、多品種少量生産となり、コスト高に陥る結果となっていました。
また、その当時の玩具用モーターの大半は、欧米のクリスマス商戦向けの製品に組込まれるため、生産量の季節変動が激しく、年間を通して安定した雇用や品質の確保が困難でした。
これらの問題が、モーター生産数量が急増するにつれ顕在化してきたため、根本原因である個別対応から脱却し、同時に季節変動を緩和する必要性があったのです。
製品の標準化
上記の問題に対して当社は、お客様のニーズを集約し、最大公約数的な標準モーターを作ることにしました。機種を絞り込むことで大量生産や生産の平準化が可能となり、雇用と品質が安定し、個別対応時に比べコストが大幅に低減され、モーター価格を劇的に下げることが可能となったのです。
モーターコストの低減は市場での価格競争力を持続・拡大させ、さらにモーターの性能を絶えず進化させることで用途の拡大にも効果を発揮しました。こうして標準製品を購入するお客様が増加すれば、規模の経済効果により、さらにコストを削減できるという好循環が生まれ、持続的な競争優位の維持に成功したのです。
生産設備・工程・管理業務の標準化
製品を標準化したことで、製品を生み出す生産設備や工程も標準化が可能となりました。
高品質のものづくりを行うためには、従業員への作業指示の徹底が欠かせません。設備・工程を標準化することで、従業員に対して効率的な教育・訓練を行い、迅速に工程に配属することができるようになりました。
「標準化」により、安定した品質の製品を生産できる体制は、当社の海外生産拠点の展開に大きな役割を果たしました。
さらに、管理業務も標準化することで本社コントロールによる計画生産が可能となり、業界ごとの季節変動や景気変動の影響を最小限に食い止めると共に、市場への大量安定供給を実現したのです。
加えて、当社はモーターの機能を極限まで高める事で製品の汎用性を高める(多用途化する)という発想をもち、モーターを開発しており、約90機種の基本モデルによって、参入している全ての用途に対応しております。
ただし、どんなに考え抜かれた標準品であっても進化していかなければ将来まで有効とは限りません。常に市場ニーズを捉え標準品性能に反映していくことが必要です。お客様は標準品が欲しい訳ではなく、ニーズに見合う低価格且つ高品質なモーターが欲しいのです。コスト競争力を維持しつつ、市場のニーズを見きわめながら、需要をいかに標準品に誘導するかが「標準化戦略」の最大のポイントです。
国際分業体制
当社の戦略を特徴付けるもう一つの取り組みは、国際分業体制です。
早期から、競合メーカーに先駆けて海外における大量生産体制を確立しており、現在では19箇所の海外拠点を有しています。
人と機械のベスト・バランスを追求
生産拠点の設立に際しては、人と機械のベスト・バランスを追求しています。
ここでいうベスト・バランスとは、手作業で要求品質を確保できる工程には積極的に人を活用する一方で、 高い加工精度が要求され人手では困難な作業や危険が伴う作業、生産規模の違いが原価に大きな影響を及ぼす精密部品加工等には惜しみなく高度な機械技術を投入するということです。これにより、高品質と低コストを同時に実現することを目指しています。
進出国との共存共栄を目指して
当社は創業10年目の香港進出を皮切りに台湾、中国、ベトナム、メキシコへと生産拠点を拡大し、常に競争力のあるモーター生産体制の最適化を図ってまいりました。 そして当社の進出が、発展途上の段階にある国・地域への雇用機会の提供や他の外資系企業の進出を促進させることで、進出国の経済発展に貢献してきたと考えております。また、当社は生産拠点の役割を固定化することなく、取り巻く環境の変化、拠点の人材及び組織力の成長に応じて、より質の高い役割を担う拠点に転換することで、マブチグループと現地拠点、ひいては進出国との共存共栄を目指しています。